Masanori's 書評&創作diary

書評と自作小説の公開など

淡々と生きる/小林正観

 

淡々と生きる

淡々と生きる

  • 作者: 小林正観
  • 出版社/メーカー: 風雲舎
  • 発売日: 2012/01/26
  • メディア: 単行本
 

 

心が洗われる一冊でした。

ここ数年、自分の人生や進む道、それは仕事も出会いも含めて、生まれた当初から決まっているんじゃないかと思うことがよくあります。

この本に書かれてあることはまさしくそれ。

もう自分の運命は決まっているから、じたばたせずに「淡々と生きる」、それが幸せの秘訣だと。

現代人は、己の意志でなにか事を成すのを良しとし過ぎているように感じます。それも大事だと思うけど、自分の欲や夢を追求すると、僕の場合は良い結果にならなかったのでバランスが大事と思います。

 

そう思い始めた時にこの本に出会えました。

この日をつかめ/ソール・ベロー

 

この日をつかめ (新潮文庫)

この日をつかめ (新潮文庫)

 


日本ではマイナーな作家の作品だけれども、読みやすくて面白かった。自己の内面に深く深く入っていって懊悩するところを描いているのも好きです。

これはアメリカの作家には珍しい手法だな、と思ったら作者のルーツはロシアなんですね。それなら納得。ほかの作品も読んでみたいな。

じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ/シェイクスピア

 

じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)

じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)

 

シェイクスピア作品は気取ってる印象があって自分にはあまり合わないな、と思いつつ読んでいたのですが、『じゃじゃ馬ならし』は、今まで読んできた中で一番好きかもしれません。『マクベス』を上回りました。

オチは予想つくのですが、そこまでの持って行き方に溜飲を下げられるし、その対象であるカタリーナの変化が爽快です。

「気取った」台詞回しがこの作品にはすごく効いていて、軽妙になっているので、鼻につかずに受け入れられる。

むしろその台詞回しでないと面白さが半減すると言ってもいいくらいでした。日本語のタイトルセンスも脱帽です。

働き方 完全無双/ひろゆき

 

働き方 完全無双

働き方 完全無双

 

 

著者のことはYouTubeの話している動画でその開けっぴろげな性格に好感を持ちました。通常の経営者とは違う、

「弱者の生き残り方」を述べているところも興味深く、本書を読んでみたのですが、本当に著者の性格がよく現れ、理想論にはいかないであくまで現実に即したビジネス戦術が書かれています。

いささか賛同できない言説もあるにはあるし、「これは違うだろ」と思う部分もありますが、世の中強い人間ばかりではないし、

できるだけ楽していきたいと思っている方は、「楽をしながらそこそこ稼げる方法」が学べるかもしれないです。

吾輩は猫である/夏目漱石

 

吾輩は猫である (新潮文庫)

吾輩は猫である (新潮文庫)

 


日本一有名なこの作品を読まなければ、読書家とは言えないと思い読みました。

序盤からなんとなく「この猫、最後に死ぬんじゃないかな」という予感がしていて、その通りになって驚きました(意外な結末だと思った人も多そうなので)。

この名もなき猫は偏屈者だが、猫だからこそ人の世を第三者的立場から見詰め、人間社会の悲喜交々を時にウィットに、時に鋭く批評できるわけですが、批評者である自分自身はどうなのか。神の目線で物事を見ながらも実は一番、世事に翻弄される憐れな存在ではないか。

 

猫を作者に置き換えると漱石の苦しみがわかる。

ヘルマンとドロテーア/ゲーテ

 

ヘルマンとドロテーア (新潮文庫)

ヘルマンとドロテーア (新潮文庫)

 

 「ファウスト」の哲学的、「ウェルテル」の悲劇的色彩とは違って、小津安二郎の映画のような牧歌的で日常生活に根ざした、心が温まるラブストーリー。

話の大枠もほぼ小津映画と同じ。 ゲーテのお堅いイメージがひっくり返る小説でした。

それでも随所随所に真理を突いた氏ならでは洞察があるんですよね。 全体で100ページに満たないので、ゲーテの中ではマイナーですが、ゲーテ入門編として良いかもしれません。

君たちはどう生きるか/吉野源三郎

 

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

 

漫画版よりは原版を、ということで読んでみました。

読書好きからすれば正直知っている事柄だけだったし、綺麗事も多く思考も突き詰めてないな、と思う。ただ、これを本来の想定読者層である中学生・高校生層が読めば、世界の見方が変わり、ティーンが抱える世の中への矛盾を解消する、大きな知的体験ができると思う。

僕の10代の頃に読書習慣があって「人間分子の関係 網目の法則」を知ることができていたら、あの頃抱えていた悩みも随分楽になったかもしれない。

教育関係の方々、本書は中学生の課題図書にすると良いかもしれません。